そんな人におすすめなのがプリムスの「P-157 インテグストーブ」です。
P-157 インテグストーブは、立っているのが厳しい爆風の中でも無風状態とさほど変わらない速度でお湯を沸かすことができる山岳向けシングルバーナーでした。インテグストーブを使ってみてよかったためレビューします。
- P-157 インテグストーブのスペックやサイズ感
- 使用感(レビュー)
- プリムスのストーブとの比較
- SOTOウインドマスターとの比較
レギュレーター機構搭載のインテグストーブは外気温への影響を受けずに出力を保ってくれる高スペックストーブでした。耐候性も高く、厳しい環境下での使用を想定したストーブを探している人におすすめです。
- キャンプ歴20年以上
- 渓流釣り(テンカラ)5年目
- アルプスから低山まで山登り
- 装備はできるだけ軽く、ULなスタイルで(現在ベースウエイト4.5kg)←装備について詳しくはこちら

PRIMUS P-157 インテグストーブ

北欧スウェーデンで130年以上の歴史をもつPRIMUSから新登場したのが「P-157 インテグストーブ」。インテグストーブはレギュレーター機構を搭載した新設計のバルブが採用された、あらゆる環境下で安定した出力を発揮する高性能シングルバーナーです。
インテグストーブのスペック
重量 (g) | 100g |
タイプ | 直結型 |
出力(kcal/h) | 3.3kW / 2,840kcal/h(IP-250T使用時) |
ガス消費量(g/h)※1 | 220g/h(IP-250T使用時) |
ゴトクサイズ(Φ mm) | 148mm |
収納サイズ | 7.3×10.1×4.7cm |
イグナイター(着火装置) | あり |
300ml沸騰タイム(実測) | 75秒 |
インテグストーブの魅力
使ってみて感じたこと
実際にフィールドで使用してみて感じたことをレビューします。
爆風でも問題なく湯沸かし可能

インテグストーブを使ってみて最も性能の高さを感じたのが耐候性の高さです。
立っているのがやっとの環境下でもお湯を沸かすことができ、耐候性の高さを身をもって体験できました。
ストーブ本体は地面に置くので立っているよりは風の影響は受けにくいものの、加熱中、クッカーやストーブ本体が倒れてしまわないよう支えながらの使用でしたが、無事にお湯が沸かすことができ、山頂ラーメンを楽しめました(爆風の影響でラーメンはあっという間に冷めてしまいましたが。。)

耐候性が高いのはバーナーヘッドの周りを覆うように壁があることです。この壁が炎の出る点火口を風から守ってくれることにより、風の影響を最小限にしてくれています。
さらによくみると、すり鉢状になったバーナーヘッドが内傾した炎をつくりだし、炎の熱エネルギーを効率よくクッカーに伝えることで強風時にも安定した燃焼を発揮してくれます。

高い燃焼力と燃焼効率
すり鉢状になったヘッドは耐風性が高いだけでなく、高い燃焼力も発揮します。
すり鉢状のバーナーヘッドは炎を内側に向かって収束するようになっていて、炎が鍋底に当たった時に外側へ逃げてしまうのを防ぎ、炎のエネルギーのロスを最小限にクッカーの底に当たることで燃焼効率が最大まで高められています。

気温約20℃、無風状態での燃焼テストをしたところ、300mlの常温の水が完全沸騰するまでにかかった時間は75秒(1分15秒)!私がこれまで使用していたストーブと比べても1分も早くお湯を沸かすことができました。
インテグストーブの出力は2,840kcal/hで、同じくプリムスのガスストーブ「ウルトラバーナー(P-153)」は出力が3,600kcal/hとインテグストーブよりも高い出力を誇りますが、300mlの水が完全沸騰するまでの所要時間は105秒(1分45秒)、インテグストーブはウルトラバーナよりも出力が低いにも関わらず、30秒も早く完全沸騰させることができました。(詳しいスペック比は後半で)
連続使用でも安定した火力を維持するバルブ

低温環境での使用経験がある人なら誰でも体験したことがあると思うのが、「ドロップダウン現象」です。
通常、ガスストーブは連続して使用することによりガスカートリッジ本体が気加熱により冷えてカートリッジ内の燃料が気化されにくくなり、火力が低下してしまいます。(これをドロップダウン現象といいます)
各メーカーは「寒冷地仕様」のカートリッジをラインナップしていますが、寒冷地仕様のカートリッジであっても連続使用による火力の低下は少なからず発生します。
火力の低下は低温環境の方がより影響を受けやすく、特に厳冬期の積雪期のような環境での連続使用時の火力の低下は顕著です。
気温0℃、環境で連続使用し、300mlのお湯を3回連続でお湯を沸かしてみて出力の変化を確かめてみたところ、1回目は84秒、2回目は85秒、3回目は90秒でした。
回を増すごとに沸騰するまでの時間は増えますが、1回目と3回目の差は6秒と誤差の範囲内。インテグストーブは連続使用でも効率が下がらずに燃焼できるストーブであることを体感できました。
低温環境の使用でもお湯が沸くまでの時間は誤差の範囲内

より低温環境での使用ではどうなのか?
気温マイナス3℃の環境で300mlのお湯が沸くまでの時間は89秒。気温20℃でのテストと比べて14秒遅くなりましたが、これは誤差の範囲内と言える結果でしょう。
低温環境になっても出力のパフォーマンスが下がらないよう、レギュレーターが出力をコントロールしてくれていることが分かります。レギュレーター機構の搭載されたストーブは厳冬期の雪山など、厳しい環境での使用を想定している人におすすめです。
雪山では基本的に雪を溶かして飲み水を確保します。一度に作れる水の量は限られるため、連続使用をすることになりますが、そういったシーンでレギュレーター機構が搭載されたストーブは使いやすかったです。
ただ、インテグストーブを使用し、寒冷地用のカートリッジであっても連続使用によるドロップダウン現象は起こります。連続使用の時にはカートリッジを温めながら使ったり、時間をおいて使用するなどの対策は必要です。
重量・収納サイズはソロ用としては大きめ

高い燃焼力、耐候性、耐寒性を備えたインテグストーブですが、鉢状のバーナーヘッドは他のストーブのバーナーヘッドよりも大きく、収納サイズも大きくなります。
私が普段使用している小型のクッカーはフェムトストーブならカートリッジと合わせて収納できますが、インテグストーブはぴったりと収納できませんでした。
インテグストーブの重量は100g(実測値も100.2g)で、軽量なモデルなら100gを切るモデルもありますから、携帯性が高いとはいえません。
小さめのクッカーを使う人にとってゴトクが大きい

インテグストーブはゴトクを広げると14.8cmになります。ゴトクを広げると、バーナーヘッドを中心に約9cmの間隔が空いているため、経の大きさが径が10cmほどのクッカーでは真上から中心を確認しながらでないと置くことができませんでした(フィールドで実用するには難しい)。

ゴトクを折りたたんだ状態でも使うことはできますが、クッカーが滑らないためのスリットが入っていないため、注意が必要です。

プリムスのコンパクトストーブとの比較

プリムスのガスストーブのラインナップには他にも軽量・コンパクトなストーブがあります。「P157 インテグストーブ」、「P-153 ウルトラバーナー」、「P-116 フェムトストーブ II」のスペックを比較してみます。
スペック比較
P-157 インテグストーブ | P-153 ウルトラバーナー | P-116 フェムトストーブ II | |
重量 (g) | 100g | 116g | 64g |
タイプ | 直結型 | 直結型 | 直結型 |
出力(kcal/h) | 3.3kW / 2,840kcal/h(IP-250T使用時) | 4.2kW/3,600kcal/h(T型ガス使用時) | 2.5kW / 2,100kcal/h (Tガス使用時) |
ガス消費量(g/h) | 220g/h | 245g/h | 170g/h |
燃焼時間(IP-250T使用時) | 約62分 | 約55分 | 約80分 |
ゴトクサイズ(Φ mm) | 148mm | 大148mm/小90mm | 大 120mm / 小 80mm |
収納サイズ | 7.3×10.1×4.7cm | 7.5×8.8×3.0cm | 5.4 x 7.4 x 2.7cm |
イグナイター(着火装置) | あり | あり | あり |
参考価格(税込) | ¥9,900 | ¥8,800 | ¥8,800 |
300ml沸騰タイム(実測) | 75秒 | 106秒 | 132秒 |
出力比較(お湯が沸くまでの時間を比較)からわかる用途に応じたおすすめモデル
異なる環境でそれぞれのストーブの性能を比較するため、300mlのお湯が完全沸騰するまでの時間を計測しました。
P-157 インテグストーブ | P-153 ウルトラバーナー | P-116 フェムトストーブ II |
75秒 | 106秒 | 132秒 |
P-157 インテグストーブ | P-153 ウルトラバーナー | P-116 フェムトストーブ II |
84秒 | 248秒 | 193秒 |
P-157 インテグストーブ | P-153 ウルトラバーナー | P-116 フェムトストーブ II |
89秒 | 129秒 | 179秒 |
最も出力が高のはP-153ウルトラバーナーの3,600kcal/hですが、実際にお湯が沸くまでの時間を計測するとインテグストーブの方が短い時間でお湯を沸かすことができました。
インテグストーブは3回のテストでの誤差が小さく、環境に関わらず安定パフォーマンスを発揮してくれることが分かりました。
燃料力で選ぶならインテグストーブで間違いありませんが、携帯性、重量を優先させるのであればフェムトストーブ IIです。

インテグストーブと比較して36g軽量で、手のひらに収まるほどコンパクト。燃料力は劣りますが、代わりに燃費が良いため、長期間の使用にも適しています。(条件として厳しい環境を除く)
UL志向のハイカーやファストパッキングでスピードを求める人ならフェムトストーブ IIをおすすめします。
ライバルとの比較「SOTO ウインドマスター」

インテグストーブの直接的なライバルと言えるのがマイクロレギュレーター機構が搭載されたSOTOのウインドマスターかと思います。
スペック比較などみていきましょう。
スペック比較から分かる何を重視するかで変わるベストなモデル
PRIMUS P-157 インテグストーブ | SOTO マイクロレギュレーターストーブウインドマスター | |
重量 (g) | 100g | 67g(バーナー+3本ゴトク) |
タイプ | 直結型 | 直結型 |
出力(kcal/h) | 3.3kW / 2,840kcal/h | 3.3kW(2,800kcal/h) |
ガス消費量(g/h)※1 | 220g/h(IP-250T使用時) | – |
ゴトクサイズ(Φ mm) | 148mm | 100mm |
収納サイズ | 7.3×10.1×4.7cm | 4.7×5.1×8.8cm |
イグナイター(着火装置) | あり | あり |
300ml沸騰タイム(実測) | 75秒 | 81秒 |
プリムスのインテグストーブとSOTOのウインドマスター、300mlのお湯が完全沸騰するまでのテストでは、無風状態ではインテグストーブが75秒、ウインドマスターが81秒と差は6秒ほどでしたが、気温約0℃、標高が約2500m地点の環境ではインテグストーブは84秒、ウインドマスターが110秒という結果に。インテグストーブの方が26秒早く沸騰させることができました。
低温環境での使用や耐候性を重視するのであれば軍配が上がるのがインテグストーブです。300mlのお湯を沸かすテストにおいては短時間でお湯を沸かすことのできたインテグストーブの方が燃焼効率は高かったと言えます。
インテグストーブの重量は100g(実測値100.2g)で、他のガスストーブと比較してみると軽量とは言えません。SOTOウインドマスターは重量が67g(バーナー+ゴトク3本)、燃焼効率こそインテグストーブがわずかに勝りますが、重量面・携帯性で比較するならウインドマスターです。
インテグストーブより33g軽量で、さらに100mmのゴトクが小さめのクッカーにも対応するため、高い出力のストーブを探しつつ軽量化を優先させるのならウインドマスターの方が良さそうです。フェムトストーブと比べても3gしか変わりませんからね。
オプションで4本ゴトクに変更できることや、ゴトクが取り外しできることで小さいクッカーへの収納も可能なことから、汎用性も高いウインドマスターも負けず劣らずおすすめのストーブです。
ガスカートリッジの入手しやすさ

SOTOのストーブとの比較をした時にプリムスに追加のアドバンテージがあるとすれば、ガスカートリッジの流通量と、カートリッジの種類です。
プリムスのカートリッジはホームセンターでも購入できることもあり、入手は容易。さらに使用する温度帯に合わせて封入されるガスの含有量の違う3つのカートリッジが用意されているため、環境に合わせて使い分けができます。
SOTOのカートリッジも寒冷地に対応するために低温でも気化しやすいプロパンやイソブタンが配合されているため、使えないことはありませんが、極地など極寒の環境での使用も想定している場合にはプロパンガスの含有量の多いプリムスのウルトラガスは活躍してくれるでしょう。
おわりに
プリムスのインテグストーブの紹介と、他のモデルとの比較をしました。
使用感としては厳しい環境である雪山で使うならインテグストーブ、無積雪期の3シーズンならフェムトストーブって感じで使い分けるのが良いかなというのが結論です。
環境に合わせてベストなストーブを選びましょう!
ストーブ選びの参考にアンレバ嬉しいです。
低温環境・悪天候でも使えるタフなストーブを探している