そんな人におすすめなのが「イスカ エアプラス630」です
この記事では初冬の北アルプスや八ヶ岳でテント泊してきたのでその時に感じたことをレビューします
エアプラス630は抜群の保温力と通気性の高さで、そしてなによりダウンがしなやかで寝ていて快適そのものでした(寝袋に包まれるのが気持ちよかったです)
- イスカ エアプラス630のスペックやサイズ感
- 使用感(レビュー)
ご縁あり、イスカの社員さんにエアプラスについての話も聞くことができたので、ホームページやカタログには載っていないこともお伝えします
- キャンプ歴は20年以上
- 渓流釣り(テンカラ)5年目
- アルプスから低山まで山登り
- 装備はできるだけ軽く、ULなスタイルで(現在ベースウエイト4.5kg)←装備について詳しくはこちら
イスカ エアプラス630
エアプラスシリーズは「かるく・ちいさく・あたたかく」をコンセプトに作られたイスカのフラッグシップモデルです
イスカが作る寝袋(シュラフ)の中で最上位に位置するエアプラスシリーズは保温力・調湿性に優れた天然の820FPのホワイトグースダウンを使用され、生地は10デニールの極薄リップストップナイロン。JIS規格での最高評価の5級を獲得した「超はっ水」生地が使われています
もっとも保温性に優れた台形ボックス構造にドラフトチューブ、独自のショルダーウォーマーで保温性が高められた4シーズン寝袋です
イスカは昭和47年(1972年)に創業された日本のアウトドアブランドです
歴史は長く、私自身も登山を始めた小学生の頃から馴染みのあるブランドです
寝袋(シュラフ)をメインに、スタッフバッグやレインバッグカバー、スパッツ、クーラーなどを取り扱っています
基本情報・特徴
最低使用温度 | -15℃ |
平均重量 | 1030g |
ダウン量 | 630g |
ダウン | 820FP ホワイトグースダウン |
収納サイズ | φ20 × 34cm |
サイズ(レギュラー) | 80(肩幅)×213(全長)cm |
構造 | 台形ボックスキルト構造 |
生地 | 10デニールリップストップナイロン |
- 生地に10デニールのはっ水加工ナイロンを使用
- 保温性に優れた台形ボックス構造
- 3D構造で体の形にフィットする構造
- ドラフトチューブ・ショルダーウォーマーで冷気の侵入をカット
- フードチューブで頭部からの放熱を防止
- ジョイントテープで他のモデルと連結が可能
エアプラスに使用されているダウンは2024年9月より、800FPから820FPにアップデートされました。もともと使用していたダウンからの変更はありませんが、検査を重ねた結果、820〜850FPのダウンであることが検査結果で出たため、820FPを下回らなかったことからFP表記をアップデートしたそうです(要するに、表記していたダウンよりも高品質のダウンが封入されていたってことです)
使用していた生地についても、もともとは「15デニールクラス」という表記から「10デニール」にアップデート。生地は縦糸に20デニール、横糸に10デニールを使用し生地にしたいたため、中間をとって「15デニールクラス」としていましたが、最薄値の10デニール表記に変更になりました(要するに、表記していた生地よりも薄い生地も使用されてるよってことです)
イスカ エアプラス630の魅力
使ってみて感じたこと
実際に使ってみて感じたことをいいところも気になったところもレビューしていきます
北アルプスで使用した時にはマイナス9℃まで冷え込んだので結構リアルなシチュエーションでのレビューができると思います
しなやかな820FPのグースダウン使用で文句なしの保温力!
エアプラス630を触ってみて驚いたのがダウンの品質の高さ。ダウンのことが詳しくなくても触ってみればすぐに分かるほどです
使用されているグースダウンはびっくりするほど柔らかいです。3シーズン用の寝袋でエアドライトシリーズを使っていますが、エアドライトで使用されているダックダウンと比べてもかなり柔らかく、ふわふわ(しなやかさは段違い)
エアプラスに使われているグースダウンはダウンボールが大きく、しなやかで羽枝が折れにくいため、ダックダウンに比べて耐久性が高い特徴があります
画像提供:Isuka
エアプラス630には高品質なグースダウンが630g封入されているため、しなやかで気持ちがいいだけでなく、高い保温力を発揮してくれます
11月中旬・初冬の燕岳 / 燕山荘、マイナス9℃の環境で使用してみて
11月初旬の北アルプスの燕岳・燕山荘で使用した時は夕方17時の時点で気温はマイナス9℃。エアプラスの最低使用温度はマイナス15℃ですから、保温力を体感するにはちょうどいい環境でした
- シングルウォール・フロアレステント
- シュラフカバーはなし
- ウエアはアンダーのみ、ソックスは行動中に使っていたものをそのまま着用
訪れた日は天候が晴れで、天気が崩れる予報もなかったのでシュラフカバーは使わずにエアプラス630のみで就寝
結果としては寒さを感じました!!
(寒いんかい!って突っ込んだ人、もう少し話を聞いてください)
原因は寝袋ではなく、ウエアでした。マイナス9℃の環境でアンダーのみで寝たのが悪かった(さすがに薄着すぎた)
低温環境では最低限、アンダーに加えてフリースくらいは着込んで寝ましょう(フリース着たらぐっすり眠れました)
エアプラス630の保温力の実力
寒さの感じ方については個人差がありますが、エアプラス630はマイナス10℃くらいまでなら安心して使えます(もちろんある程度ウエアは着込んで)マイナス5℃くらいまでなら薄着でもぬくぬくです
最低使用温度に設定されているマイナス15℃くらいになると、寒さへの耐性が強い人なら単体使用できると思いますが、カバーに加えインナーなども使用することでなんとか使えるかなって感じです
- マイナス5℃くらいまでなら薄着で寝ても寒くない
- マイナス10℃くらいまでなら比較的安心して使える(ウエア着用)
- 最低使用温度(マイナス15℃)での使用にはカバー・インナー・ウエアを着込むなどしないと厳しい(逆に言えば、対策すればいける)
イスカの寝袋は独自の検査と、蓄積したデータと経験に基づいて最低使用温度を表記しています
私自身がこれまでエアドライト140、エアドライト290、エアプラス450、エアプラス630を使っみた経験から、概ねこの最低使用温度は信頼できる数値です(体験ベースで)
保温力よりも驚いたのは「通気性」
マイナス9℃の環境でも眠れたということで、保温力が高いことは実感できたのですが、それよりも驚いたのが「通気性」の高さです
寝ていても全く「蒸れ」を感じませんでした。以前使用していた冬用の寝袋だと、着込んで寝るとどうしても多少の蒸れを感じることがあったのですが、エアプラス630は蒸れは皆無
通気性の高さはどうしても公式サイトのスペック上では分からないところ。私も実際に使ってみるまで分かりませんでしたが、エアプラスの1番のおすすめポイントはこの通気性の高さだと私は思います
快適に眠れるのって保温性も大事ですが、「蒸れにくさ(通気性)」も大事なんだということを教えてくれたのはイスカの寝袋でした
天然のグースダウンは調湿性能が高く、保温がメインの仕事であるダウンが通気性も高めてくれています(グースダウンの性能が高いってこと)
至れり尽くせりなダウンですね
グースダウンとダックダウンの違いって詳しくは知りませんでしたが、比べてみると大きな違いがあることを教えてもらいました。ここもカタログなどのスペックでは分からないところです
高いはっ水生地で水濡れに強い
通気性の高いエアプラス630ですが、水濡れにもしっかりと対応しています
生地に使われている10デニールのリップストップナイロンは超はっ水で水を弾いてくれます
防水生地ではないため、過酷な環境下ではシュラフカバーとの併用が前提となっているエアプラスですが、多少の水は弾いてくれるので、ダウンの弱点である水濡れにも強くなっています
1泊の短期登山やハイキングならカバーなしでも使うことができました
エアプラスに使用される天然のグースダウンはもともと高いはっ水性能があり、本来のダウンの持つ性能を活かすためにあえてはっ水加工はしていません
グースダウンのはっ水性能は洗濯しても性能は衰えないことが分かっているそうです。至れり尽くせりなダウンです(2回目)
エアプラスは過酷な環境での長期使用を考えられている
前にお伝えした通り、エアプラスに使われている生地ははっ水はしますが、防水生地ではありません
水への対策をするのであれば生地を防水した方がいいかとも思いますが、防水生地にしないのにはちゃんとした理由があります(イスカの社員さんに伺いました)
イスカのエアプラスは過酷な環境である山岳地帯で長期使用を想定し、開発・製造されています。何日も使用する中で、寝袋が濡れてしまうことは致命傷になりかねません。そのため、寝袋本体には「保温・通気」を任せ、カバーに防水の役割を担ってもらうことで寝袋が水で濡れるのを防ぎ、ダウンの弱点である水濡れを対策するように設計されています
防水生地を使った寝袋をカバーなしで使用した際、翌朝に生地はテントの結露が付着し、寝袋の表面を濡らします
結露は低温環境で凍り、収納時に除去するのは不可能。生地が凍った(濡れた)状態で収納するわけですが、次に使う時には生地に結露が付着していたまま収納していたためダウンを湿らせてしまい、その状態での使用は濡れによりダウン本来の性能は発揮されませんでした。こうなると環境次第では死活問題です(私はなんとかやり過ごせました)
1泊の逃げ切り山行なら、1回しか使わないため翌朝にダウンが濡れてようが関係ありませんが、2泊、3泊の長期となる場合にはカバーとの併用で寝袋を濡らさないことがマストになります
防水生地を使った寝袋はカバーがいらなくなる分、軽量にできる側面もありますが、長期の縦走やトレイルをするならカバーは必須になります
収納袋にゆとりがあって収納しやすい
エアプラス630の収納サイズをみると、他社の同等の寝袋よりも大きめ
ただでさえ冬用の寝袋は大きいのでできるだけ収納サイズがコンパクトな方が魅力的ですよね
そういった意味ではエアプラス630のφ20×34cmの収納サイズは他ブランドの寝袋と比べ大きく、デメリットに見えます
が、
付属の収納袋、かなり余裕がありました
冬用の寝袋ってかなり膨らむから、収納しにくかったりするんですけど、エアプラス630は収納したすかったです(ぎゅうぎゅう押し込む力がそんなに必要ない)
防寒具一式を収納可能
どのくらい余裕があるかというと、厳冬期にテント場で使う防寒具一式全部入るくらい
エアプラス630に加え、ダウンジャケット、ダウンパンツ、厚手のソックスを入れることができるサイズの収納袋になっています(これ全部入ります。本当です)
寝袋はできるだけ小さくしようと圧縮しすぎてしまうと固くなるのでバックパックへの収納がうまくできなくなることもあります。ですがエアプラス630の収納袋は余裕があるため、バックパックのサイズにフィットしてくれ、背負った時に違和感を感じにくいです
圧縮すればメーカーが公表している収納サイズよりもだいぶ小さくすることもできます
4シーズン使えて重量はたったの1030g
冬の装備で悩ましいのは防寒装備が重たくなることですが、エアプラス630の重量はメーカー公表値で1030g
実測値で1046g(数回使用後に測定)
マイナス10℃までは安心して使え、対策すればマイナス15℃ほどまで使える4シーズン寝袋としては1kgほどで済んでいるのは軽量と言えるでしょう
さらに軽量な寝袋を求めようとすると、フードレスだったり、機能を廃した寝袋になるのでエキスパート向け。安定感と安心感のあるマミー型の寝袋の方が初心者から経験者まで安心して使うことができます
シンプルなのに噛み込みにくいジッパー
ストレスを全く感じなかったジッパーの開閉
歴代使用してきた寝袋はジッパーに生地に噛んでしまうことが多く、ストレスを感じることがあったのですが、イスカの寝袋は生地が噛むことがほとんどありません
特に工夫も感じないシンプルなジッパーだったのでイスカの社員さんに聞いてみたところ、生地に噛みにくくなっているのはジッパーに沿って糸を通しているからだそうです(ちゃんと工夫してました!)
シンプルなジッパーなのに噛みにくいように施された地味なギミックですが、ユーザーが使いやすくなるためのこだわりを感じました
ダブルジッパーだから暑い時は温度調節もできる
通気性が高く、蒸れにくいエアプラス630ですが、ダブルジッパーになっているので、暑さや蒸れを感じた時には調節できるようになっています
もともと通気性が高く、低温環境での使用なので出番は少ないかもですが、初秋や春先など、想定外に気温が上がった時など体温調節しやすい機能です
サイズ感について:185cmオーバーでも問題なかった
イスカの寝袋は「ロングサイズ」がありません(モデルによってショートサイズはあり)
ちなみに、レギュラーサイズの最大適応身長は182cm
私の身長は185cm(3センチオーバー)
適応身長をオーバーしてるわけですが、寝袋に入ってもつっぱる感じなどもなく、実際に使ってみても不快感なく使用することができました
3シーズン用の寝袋よりも大きめの作りで窮屈さがない
イスカの寝袋は3シーズン用と4シーズン用でサイズが変わります
4シーズン用の寝袋はウエアの着用を想定した設計になっているため、着ぶくれた状態でも窮屈さを感じないよう肩幅が広くなっています
エアプラス630も肩幅が80cmになっているのでウエアを着込んでも窮屈さを感じませんでした
品質を考えるとコスパのいい寝袋
エアプラスの購入を考えている人はまず間違いなく悩むのが「エアプラスか、エアドライト」かです(私もそうだったから)
価格差でいえばエアドライトの方が若干低価格でリーズナブルに見えますが、エアプラスとエアドライトの両方を使ったことのある私としては、
断然エアプラスがおすすめです
エアドライト670は57,200円、エアプラス630は61,600円(価格は2024年12月時点の税込価格)
その差は4,400円ですが、グースダウンは価格差以上の価値があります(使ってみた体感から)
というか、グースダウンを使用した寝袋でここまで安いのはイスカくらいです
特に冬用の寝袋の場合、ほいほい買い替えできる価格でもありません。できれば一生使いたいですよね
耐久性、通気性、質感。全てにおいて品質のいいグースダウンを使用しているエアプラスの方がおすすめです
気になったところ
実際に使ってみて、これといった欠点のなかったエアプラス630ですが、気になったのはショルダーウォーマーの形状です
「コの字」型になっているショルダーウォーマーは一見すると首周りにフィットしてくれ、暖かそうに思えましたが、寝ていると意外とズレる。だからと言って冷気が侵入してきて寒かったということはありませんでしたが、なんとなくズレてしまうことで最大限の保温力を発揮してくれないのではと気になったところでした
まとめ
- 使用最低温度15℃の冬用寝袋
- 生地に10デニールのはっ水加工ナイロンを使用
- 保温性に優れた台形ボックス構造
- 3D構造で体の形にフィットする構造
- ドラフトチューブ・ショルダーウォーマーで冷気の侵入をカット
- フードチューブで頭部からの放熱を防止
- ジョイントテープで他のモデルと連結が可能
- グースダウンの抜群の保温力(超やわらかい)
- 驚くほどの通気性の高さ
- はっ水生地で水濡れに強い(でもカバーとの併用が前提)
- 収納袋には余裕があるから収納しやすいし、防寒具一式入る
- ジッパーが生地に噛みにくく、ストレスがない
- 185cmでも使える(肩幅も大きめ)
- 品質と性能のバランスをみるとコスパのいい寝袋
エアプラス630はこんな人におすすめ
- 一つの寝袋でオールシーズンカバーしたい人
- 厳冬期に2000m級の山岳地で使うことを想定している人
- できるだけ長く使いたいと思っている人
おわりに
イスカ・エアプラス630を紹介しました
冬のテント泊登山やキャンプでは寒さをどう凌ぐ(楽しむ)かが重要です
特に「睡眠」は満足度に直結しますので、暖かい寝袋を使って寒空の下でももぬくぬくと眠りましょう!
初冬から厳冬期まで使える4シーズンシュラフを探している